誠ノ桜 -桜の下で-



ハッキリ経緯を言い放った凜に、宮部が目を
見開いて突っ込む。

…どこが以心伝心なのだか。


「道場破り?…女がか?」


途端、道場中で笑いが起こった。

凜はさして怒る様子もなく、咳ばらいをする。


「私は会津藩松平公直属部隊隊長 水城 凜。
藩士募集の命により、先ずは試合を願う」


凜がそう言うと、今度は皆響(ドヨ)めいた。

江戸でも凜は有名らしい。


「ふむ…良かろう」


道場主らしき大柄の男は、人当たりの良い笑
みを浮かべて了承した。


「では草壁(クサカベ)、行け」

「はい!」


一番手は草壁と言う男。

道場破りと試合をする一番手は、大体は弱い
奴だ。

つまり、これでこの道場のレベルが分かる。


「薫」

「はーい」


こんな道場一つ、宮部で全滅だろう。

そう考えて凜は宮部を出した。


「では竹刀で一本試合、始めっ!!」



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