Fahrenheit -華氏- Ⅱ
「……うん。そうだけど……」
「Get out of here.」
と瑠華は額に手を当て俺にそう言い放ち、俺は目を瞠った。直訳すると「出ていって」
「え!!?」俺、何か地雷踏んだ!??でも、どこで!!?ワケが分からず戸惑っていると
「すみません…『信じられない』と言う意味です」と言われて、
「あ……そう?そうなんだ~」と軽~く流そうと思った。いや、軽く流せる話題じゃないだろ!!
「もしかして……もしかしなくても、あれってホントの話……だったり??」
俺はまるで命綱もなしで暗闇の中、綱渡りをするかのように慎重に聞いてみた(つもり)
『信じました?』と言うまた軽い冗談が帰ってくるのを期待していたが
「本当のことです」
と、瑠華は至極真剣にきっぱりあっさり。
「る……柏木さんも…心音ちゃんの嘘…って言うか悪い冗談に騙されたクチじゃない?」
俺は顏を引きつらせて何でもないように笑って、みせた……つもりがうまく笑えない。
瑠華は俺の発言に今度こそちょっと気を悪くしたように顔をしかめて
「冗談ではありません。心音は毎年一回各界の著名人を集めてチャリティーパーティーを催すんです。心音が声を掛ければ億万長者のセレブたちがこぞってその参加権を手に入れようとするぐらい、彼女はあの世界で有名です。
ただ、ああゆう性格なのでメディア嫌いで、大々的には行われないので表には一切公表されませんが。そのチャリティーイベントで集まったお金をその修道院や、もちろんその他の修道院にも寄付しているのです。
何なら口座の開示を要求すれば見せてくれるんじゃないですか?」
ちょっと皮肉っぽく言われて、俺は慌てて首を縦に振った。「分かった、信じたよ」と言う意味で。
「その話は心音の前でタブーなんです。知っているのは私と、もう一人だけ―――……」
瑠華はここで口を噤み、口元に手を当てた。言った後になって後悔しているようだ。瑠華らしからぬ言動に、逆に気になるものがあった。
「ヴァレンタイン?」
俺が聞くと、瑠華は目を開いた。