Fahrenheit -華氏- Ⅱ
ちょちょちょちょちょーーーーっと!
「何でそう思うワケ!」俺は思わず平静を取り繕うことすらできず、素で聞いちまった。
まぁ??関係を疑われてるワケじゃないからいい……のか??佐々木は特に他意があったわけじゃなさそうで
「だってこの所、やたらと携帯を気にしてるし。お昼一緒に食べてても東京の観光名所はどこですか?って聞いてきたり。
遠距離恋愛ですかね!
それにっ!!今日、柏木さん指輪してました!高そうなの」
指輪…してたな。
俺とお揃いの、ペアリング。左手だと意味深だからと言う意味で右手だったけれど、それを言ってくれた朝、俺は嬉し過ぎてその場で瑠華を抱きしめた。
その結果、むぎゅーと引きはがされた。
『気持ちも体温も熱いので』と言う理由で。
くっそ、柏木 瑠華め!俺を一秒で氷点下まで突き落とす、恐ろしい女だぜ。
と、まぁリングのことはそう言うことがあって、
何故リングを指に付ける気になったのかは、俺は聞いていない。
けれど―――何となく悟った。
瑠華は、俺と真咲との関係を『信じる』と言ってくれた。けれど心のどこかで不安だったのかもしれない。
俺がマックスに向ける気持ちと同じで。
「まぁまぁ、そんな指輪一つで決めつけんなよ」
と言った本人がペアの相手だってことは言えねぇ。
佐々木は今にも泣きそうな情けない視線を俺に向けてきて、てかそんな目で見られても……
携帯を気にしてるのは心音ちゃんが何かやらかさないかどうか心配なだけだ。まぁ??遠距離には変わりないな。
「つまりあれだ……お前は、柏木さんにラブ熱が再燃して、彼女の動向が気になる、と?」
「部長は気にならないですか!部長だって狙ってたでしょう!」
そう言われて否定はできない俺。だって狙ってたことは事実だし、その後ちゃっかり恋人同士になっちゃったりもしたし、しかも現在進行形だ。
「てか何でまた柏木さんに戻ったんだよ?いっとき瑞野さんにお熱だったのに」
「さっきも言いましたけど、僕…瑞野さんのことあまり知らないし。でも柏木さんのことなら知ってます!怖そうに見えるけどホントは凄く優しいところとか!仕事もできるし尊敬もしてます!しかも……」
「美人だし?」
俺が後を付けたすと、佐々木はちょっとだけ顔を赤くして俯いた。
まぁ毎日向かい合って仕事してる仲だし。ついでに言うと昼休憩はほとんど二人一緒に入ってるし?(←ちょっと嫉妬)きっと俺が知らない話題をいっぱい話してるだろうし~……
最初は冷たくてお高く留まってるだけのキャリアウーマンかと思いきや、佐々木の言う通り本当は凄く優しいし、仕事でも人間関係でも情熱的な部分もある。佐々木が瑠華のことを好きになる気持ちも分からないワケではない。
「分かってるんですよ……僕には高嶺の花ってこと」
まぁそうだな。と言う言葉は仕舞いこんだ。
佐々木は―――ホントはずっと瑠華のことが好きなんだ。恋が成就することが無いって分かり切っていたから無理やり瑞野さんの存在で好きの上塗りをしようとしていたに違いない。でも結局できなくて……
「気が多いって言って悪かったな。お前、すっげぇ純粋なヤツだ。一途って言うの?
お前が今後付き合う女の子はきっと幸せだな」
俺は眉を寄せて何とか笑った。
ごめんな佐々木。
幾ら可愛い部下でも、俺は瑠華を―――絶対に譲れない。
でも
「“好き”の上塗りなんて……できねーよ。
諦めずその気持ちにしがみついてりゃいいんじゃないの?」
片思いほど、辛いものはない……気持ちが大きくて深い程、その沼みたいな苦しみから逃れることができない。
でも同時に「好き」って気持ちはエネルギーにもなるんだ。喜びにもなる。
そう考えると「愛」は偉大だ。と、気づいた。