Fahrenheit -華氏- Ⅱ

それからと言うのも、佐々木は梅酒のソーダ割をちびちび飲みながらも


「柏木さんの彼氏ってどんな人なんでしょう……きっと凄くハイスペックなんだろうなー……今日着てた服もすっごく高そうだったし、きっと彼氏に買って貰ったんでしょうね…」


値段は聞くな。聞いたらぶっ倒れるぞお前。


「でも柏木さんがバリバリのキャリアウーマンだからその逆でヒモみたいな男だったらどーしよ!騙されてるとか!」だとか


と佐々木はあれこれ勝手に想像している。


ハイスペックかどうかは分からんが、ヒモでもないしましてや騙されてることはない!ことは確かだ。と俺は内心頷いた。


「もういい加減諦めろって。何なら合コンでも開くか?」


不本意だし、瑠華に知れたらまた冷たい目で見られるんだろうな~とかあれこれ考えたが、このままじゃ佐々木が不憫過ぎる。


そんなことを考えてるときだった。


「いらっしゃいませ~!」と店員の明るい声が聞こえて、何となく入口の方を見ると黒い総レースのトレンチコートの裾を優雅に翻しながら


「すみません、ツレがいるのですが」と答えていて


「る…柏木さん!こっちこっち!」俺は手を振って手招き。佐々木も振り返った。


瑠華が姿勢良くこちらに歩いてくる。歩く度にふわりとコートの裾がなびき、後ろで一つでまとめたゆる巻きの髪の先がふわりと揺れ、


男共の視線を一心に集めていた。


佐々木はぐりんと前に向き直り、至極真剣に


「やっぱり諦められません!」と一言。


いや、諦めろ。高嶺の華だ。


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