Fahrenheit -華氏- Ⅱ

四人掛けの掘りごたつの座敷テーブルだったわけで、瑠華はパンプスを脱ぐときっちり揃え、しかし俺の横に座ることはなかった。つまり佐々木の隣ってわけ。


ま、まぁ?それが自然だよな……立場上。


佐々木は一人嬉しそうにしていて、瑠華は特にその場所に落ち着くことを気にしていない様子でコートを脱ぐ。


コートの中は長袖がシアーで透ける素材で、スカートはチョコレート色のトレンチスカート。


コートの中も抜かりないファッションセンス。


まぁ?さっきまで一緒に仕事してたわけだし分かってたけどね。


白くて細い手首に巻き付いたカルティエのブレスレット・ウォッチとか、揺れるタイプのピアスもきっとブランド物だろうな。


何か…俺店のチョイスまずった??


激しくミスマッチだぜ。瑠華の周りだけやたらとキラキラして見えるのは彼氏の贔屓目とかじゃなく、本当に美人でファッションセンスも抜群で、違う席から男どものちらちらとした視線を瑠華に向けていて痛い……じゃなくてムカつく。


俺のもんだ。見んじゃねぇ!


とガン飛ばしてみるものの、全く効果なし。俺の眼力を持っても瑠華が気になる様子。


けれど瑠華は男どもの視線を気にした様子ではなく「お疲れ様です。すみません、道が混んでいて遅くなってしまいました」と律儀に頭を下げる。


「お疲れさん。いやいや、いーよ。まだ始まって間もないし」と俺が笑うと、瑠華はほっとしたように「私も生を一つ」と店員に注文している。


一方の佐々木はついさっきまで瑠華のあれこれを噂していたからか、それ程飲んでないって言うのに顔を赤くして


「お、お疲れ様です!」と頭を下げる。


瑠華のビールが届いて、改めて三人で「お疲れ様」と言い合い乾杯。


俺らが楽しそうに(?)してるからか?男共は少し悔しそうだ。


ざまぁ。


へっ!俺様だって瑠華を口説き落としたのに三か月も掛かったんだ。


お前らには一生無理!


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