Fahrenheit -華氏- Ⅱ

「さっきも言ったよね。あたしの計画は完璧だって」


「ええ、心音に落ち度はない」


「じゃぁ…」と言いかけた言葉に


「Fahrenheitを取り返した後、気付かれる恐れがある。いえ、恐れじゃなく間違いなく気づく。あたしとFahrenheitとの繋がり」


心音は深いため息をつき


「そこまでは考えなかったわ。だって、まさかあんたたちの会社がそんな仕組みになってるなんて知らなかったから」


「言ってなかったもの、仕方ないわ」あたしは思わず苦笑を浮かべた。


「彼は必ずあたしを攻撃してくる筈。そうなれば稟議を通した啓やおじさまの立場が一気に危うくなる。だって騙した形になるわけだから。


場合に寄っては派閥の権威が逆転することもある。会長は退陣、啓は責任を問われて会社を辞め去るを得ないかもしれない。


もちろん一番最初にあたしのクビが飛ぶけどね」


あたしは手刀で首を斬るフリ。


ふぅ


心音は再びため息をつき、しかしさっきの大きな物じゃなかった。






「計画は中止にしよう。


瑠華の立ち位置や、あんたの大切にしてるもの、あんたは一気に、





また全部失うことになる」



心音は無表情に言ってビールの缶に口を付ける。


「心音……」




声を掛けると、心音はちょっと悲しそうに笑って




「だって、瑠華はあたしの親友よ?


誰よりも近くに居て、誰よりもあんたの苦しみを知ってるつもり。


“また”失うことはさせない」




心音―――……



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