Fahrenheit -華氏- Ⅱ
瑠華は昨日の妖艶と言える黒トーンの服から一転、今日はミルク色のニットアップ。その細い首に俺とお揃いのティファニーのリングがぶら下がっていた。
俺のワイシャツの中でも同じリングがあると思うと、それだけで一日幸せ。
何て燃費のいい『幸せ』!
俺は自身のリングが下がっている辺りを押さえた。
社内では秘密の関係だけど、俺たち二人はみんなが知らないところで繋がっている、と言うシルシ。
やっぱこれを幸せって言うんだろうなぁ。
俺は新聞を読むフリして、ちらりちらりと瑠華の横顔を盗み見た。
ゆるく巻いた栗色の髪を耳にかける仕草とか、白くて形の良い耳にぶら下がった品の良いゴールドのピアスとか……あ、でもカルティエのブレスレット・ウォッチだけは一緒だ。
と、相変わらずおすぎとぴーこ並のファッションチェックをしながらも
昨日のもオシャレでかっこよくて、しかも瑠華にすごく似合ってたけど、俺的好みはこっちの方かな~
なんて考えていると
「啓」
またも瑠華が目を上げた。
「はい!またも心の声聞こえてましたよね」
俺は慌てて口にチャックをする仕草。
しっかし60万かぁ……
新しいパトロン説、再浮上??
「啓」
またも名前を呼ばれ、俺……何で今日は心の中の声駄々漏れなの…↓↓瑠華とオフィスで二人きりだから気が緩んでるのかな…
「昨日のコート、バッグ、靴は心音が買ってくれたものです。パトロンではなく親友です」
瑠華は目を細めながら新聞を畳む。
「え!心音ちゃんが!?」
それにはかなり驚いた。
てか友達に60万もするコートをプレゼントするって心音ちゃんの会社どんだけ儲かってんだよ。
「昔はあたしも割とあんな感じでしたが、あたしも今日のスタイルの方が好きです」瑠華はほんの少し微笑んでいて、
笑顔が……眩しっ!!
暗いフロアの中そこだけ輝いているような。思わず目を庇いたくなるが、逸らしたくない。
なんて思っていると、締め切られたブラインドがほんの僅か明るみを漏らして、それがリアルにデスクに反射してたのを見て、俺は立ち上がり窓に近づくとブラインドを上げた。