Fahrenheit -華氏- Ⅱ

瑠華は始業時間の五分前に戻ってきた。


書類といくつかのファイルを束ねていた。


「綾子さんの所でコーヒーを御馳走になりました」と淡々と報告されて、


やっぱ綾子め!単に瑠華とコーヒータイムしたかっただけなんだな!


とプリプリしながら


「ちょうど良かったです、私も秘書課の様子を見て見たかったので」と呟いた言葉は俺にしか聞こえないようだ。


佐々木はせっせとメール確認やら書類整理などに勤しんでいる。


俺は頭に「?」マークを浮かべた。秘書課……と言うか会長室は何度も足を運んでいる筈なのに何故に今になって?


と思ったが、すぐに朝イチの電話が掛かってきて、その疑問は打ち切られた。


午前中はこれと言った大きなトラブルなくスムーズに仕事ができた。瑠華のお小言も少な目だったしな。


昼休憩になり、瑠華と佐々木が立ち上がる。


「今日の社食の定食は何でしょうね~?」と佐々木が瑠華に聞いていて


「すみません、一件電話をしたいので先に行っててください」と瑠華は携帯を手にしている。


「え……」と佐々木は不服そうだったが


「席だけ取っておいてください、必ず行きます」との言葉に佐々木はどこかほっとしたように


「分かりました!」と勢いよく挙手。


そして二人はフロアから消えた。


電話って言うのはあれだな、心音ちゃんだよな…


やっぱ心配なんだよな、瑠華も。


一人納得して仕事を再開させる、とシロアリがパーテーションからひょっこり顔を出し


「あの……柏木補佐は…?」と遠慮がちに聞いてきた。


「昼休憩、食堂じゃね?」と適当に返すと


「……そっかぁ…分かりました」とこっちもどこか不服そうにして顏をひっこめた。


佐々木と言い、シロアリと言い、ついでに心音ちゃんといい、瑠華はモテモテだな…


でもでも本命は俺だもんね!
< 636 / 646 >

この作品をシェア

pagetop