蒼空で。
妊婦だと言うのに、せかせかと動き回っていた藍さんもようやく落ち着き、椅子に座った。

他愛もない話をしながら、藍さんのふとした瞬間も何故か懐かしく思う。
今も、ほら、目を伏せたその姿にドキリと胸が跳ねる。

それを振り払うために窓の外に目を向けた。


「…ねぇ、ゆきちゃん?
ゆきちゃんは、どうしていつも窓の外ばかり見てるの?」

心なしか、強張った声が聞こえる。

「どうして、なんでしょう…」

青く澄み渡る空を見ながら、どうしてか。
質問の意味を考えた。

「あぁ、そうだ。
教えてもらったんで、す…」

……あれ?

「そう……
…………………ーー誰に?」


…誰に? ズキ


"綺麗だろ?"


だれに? ズキッ


"一番、好きなんだ"


ダレニ? ズキンッ


「っ…」

テレビの砂嵐の様に途切れ途切れに頭に映し出される映像。
それと共に頭に激痛が走り、ついに我慢できず頭を抱えた。

「ー!?
ゆきちゃん!?」

それに驚いたのか藍が慌てて立ち上がり、近づく。

< 10 / 22 >

この作品をシェア

pagetop