蒼空で。
「……俺だよ。」

「「「…えっ、」」」


声を漏らしたのは私じゃ無く、先に部屋に入って来た人達で……
説明してる黒髪の目つきの悪い人に睨まれて、三人は口を結んだ。

…目だけで軽く人を殺せそうだと思った。


「お前の名前は藤堂ゆき。」


…なに?
名前くらい知ってる。


「18才、今年高校卒業予定。好きな食べ物はハンバーグ。」


それも知ってる。


「両親がいないから、施設で暮らしてる。」


知ってる。


「捨て犬拾って施設じゃ育てられねぇからって、よく俺達の倉庫に連れて来てた。」


動物は好きだけど…倉庫のことは知らない。


「今、事故にあって、入院してる。」


……事故……


「もしかしなくても、お前は

………記憶を、無くしてる。」


記憶喪失……?


「……んで、お前の腹ん中にいる子供は…俺との子だ。」


……それは知らなかった。


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