秘密のMelo♪y⑤*NY編*
少し遠慮がちに放たれた一言に、思わず俺達はそろって聞き返した。
「だってバイオリニストにとったら、腕は命だろう?」
冷静に言うユウキだが、やっぱり動揺してるんだろう。
もはやドイツ語という選択肢を忘れている。
『あ……そういえば…』
『長い…よね』
『だってもう二ヶ月だわ。全然…』
……そうだ。
全然、包帯が取れる気配がない。
硬直した筋肉を動かすためにリハビリをしているというが…そのわりには長くないか?
筋肉をほぐすだけならもう…そろそろ変化があってもいい頃だ。
『……え…』
アッシュの顔がサッと青ざめた。
最悪の事態を予想したらしい。
『ま……まさか…! …ね、ねえ? シュン…』
『い……。…俺に聞かれても…』
…まさか……まさかなにか、支障でもあるってのか…?
そんなバカな…!
あの腕に…天才という一言で済ますにはあまりにもったいないほどのあの腕に、そんなものがあっていいはずがない。
どれだけ彼女の演奏を待ち望む人がいることか。
今回の復帰で喜んだ人がいることか。
そしてなにより……。
真裕から、バイオリンという要を奪ってはいけない。
真裕の人生そのもので。
亡き母や…師匠、それに楓との強い接点。
もしなにかあれば…!
真裕は本当に……。
「…!」