秘密のMelo♪y⑤*NY編*
現実逃避にしか見えない彼らの行動に少々呆れながら、ベッドに倒れ込んだ。
真裕の部屋よりは一回りほど小さいのだが、そこには、うちのものより一回りも二回りもでかいベッドが二つと、一般家庭にあるのと同じくらいのサイズの冷蔵庫が一つ。
それからえらく高そうなソファが二つと、これまた高そうなガラステーブルが一つ…。
そしてどでかいクローゼットの扉が壁一面にあって、トイレと風呂に続く扉まであるわけだが、なぜだかただっ広く感じる。
きっとあれだろ。
もともとが広すぎて…こう……。
…なあ?
むしろユウキも一緒でいいと思うんだが。
もう一つベッドが増えたらちょうどいいくらいだと思う。
なんせ…ほら。
そのベッドのサイズがハンパねェからな。
まあ真裕曰く、「このサイズの部屋にはベッド二つが限界でしょお!?」…だ、そうだが…。
…あいつぜってェ普通には暮らせねェな。
うちなんかを見た日にゃ、「犬小屋…?」とでも言いそうだ。
……言わねェか。
ごろごろと寝返りを打ちながら、色んなことを考えた。
例えば、今眠って起きたら全部夢でした、とかって、いつも通り真裕と楓がいちゃついていたりしねェかとか。
例えば、実は楓はなんか超能力者で、ひょんっと突然現れたりしねェかとか。
例えば、そもそも楓は事故に遭っていなかった、とかいう拍子抜けのオチがあったりしねェかとか。
例えば、楓はあの爆風で未だに空を浮遊してて、ふと窓の外を見たら降ってきたりとかしねェかなとか。
それかいっそ、こすったらどんな願い事でも叶えてくれる魔法のランプだか金魚鉢だかフライパンだかでけろっと生き返っちまうってのも…。
だんだんあり得ない方向に流れていく俺の思考はもはや止まらなかった。
とにかく……あいつさえ生きていれば。
あいつさえ、そばにいてやれりゃあ……少々何があったって、真裕は大丈夫なのに。
本来とても強くて……周りの人間の力なんか必要としないようなやつだから…。
「ふう…」
どうしたもんかね…。
ダメだよくそ…。俺達が束になっても、お前ひとりに…いや、お前の一言にすら届きゃしねェよ。
なんとかなんねェかなあ……。