秘密のMelo♪y⑤*NY編*

―――……

そしておよそ一週間後。

今日も病院に行ってきたあたしは、紙切れを眺めながらごろごろしていた。


「……」


信じられないな…まだ。

なんか色々と。

だってリハビリも順調で、左手は今だいぶ動くんだもの。

バイオリン…本当にできないのかな?


試してみようかと思ったこともあるものの、怖くて触れなかった。

色んな意味で怖かった。

これを手にしたらまた何か失うんじゃないかとか。

本当にできない事実を知るだけなんじゃないかとか。

そういう、色んな意味の恐怖。


「ふう」


考えごとすると疲れるよ…。


ため息をこぼし、身を起こした。

ちょっと、外に出てみようと思って。


のろのろと着替えてカーディガンを羽織り、ローブも肩にかけて。

なぜかこそっと部屋を出た。


「あらっ、お嬢様! どちらへ?」


「あ…」


み、見つかっちゃった。

坂本さん…一番面倒だ、ある意味!


「ちょっとそこまで…?」


「いけませんわ!? お体に障りますっ」


「だ、大丈夫よ…」


「いいえ、外は冷えます」


「だからこうして厚着をね」


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