桃染蝶
一夜の存在は、もう
私の中では、兄だった。

大好きな兄。

「イチヤ
 ミカンの皮ぐらい
 自分でむきなよ」

「うるせえ」

「カヤちゃんも
 りんご、どうぞ」

「サオリさん、ありがとう」

一夜は、極道から足を洗って
今は沙織さんの実家の和菓子屋
を手伝っているらしく、朝早く
から夜遅くまで働き

そして、愛する彼女の元へと
帰ってくる。

「ただいま」

「お父さん、どうだった?」

「今日も、怒鳴られた」

「あの、イチヤを怒鳴る事の
 できる、サオリさんの
 お父さんってすごいかも」

「強情・堅物・親父だよ」

三人の笑いあう声が部屋中に
響いた。
< 330 / 386 >

この作品をシェア

pagetop