桃染蝶
「イオリ
 走っちゃダメよ」

その声に気がついた男は
足早にその場を去ろうとした。

サングラスをかけた男と
すれ違う庵は転んでしまう。

「おいっ、おまえ

 大丈夫か?」

中越しになって、庵に
声をかける男。

「うん」

サングラスを外し子供の顔
を見つめる男の顔色が
みるみるうちに変わり
青ざめていく。

『この子が、沙織の子?』

いつか見た、あの写真と
同じ顔。

男の手が、庵に触れそう
になる。

「イオリ

 こっちにおいで」

その声に、庵へと差し出した
手を引く正二。
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