藤井先輩と私。
朝のHRの予鈴が鳴ったというのに、廊下は騒がしい。
早く先生来て注意すればいいのに。
ちらちらと廊下の様子を見るけれど、藤井先輩の表情までは確認できない。
周りに居る子たち、みんな可愛いなぁ。
あの中の誰かが先輩の彼女になったりするのかな。
先輩両手いっぱいに手紙持ってたけど、あの分だけ先輩を想ってる人がいるってことだよね。
ファンクラブって、私が入学する前からあったわけでしょ。
ということは、私よりずっと長い間先輩を想い続けている人がいるってことで…。
私なんか好きだって気付いたのつい最近なのに。
こんな私が、先輩に近づくのっていけない気がする。
でも…。なんだか先輩が女の子に囲まれているのをみてるの嫌だな。
…だめだめ。
もう、どんどん思考が暗くなってってる。
こんなの私らしくない!
頬を両手でパンパンとたたき、暗い思考を終わらせた。
「お前ら、クラスに戻れ!」
廊下で担任の声がする。
その声とともに、複数の足音が散っていくのが聞こえた。
廊下を見ると、先輩に群がっていた女の子たちはいなくて、先輩もいなくなっていた。
ホッと少し、安心。
「ほい、席付け~」
担任は教室に入ってくると、黒板にもたれかかって委員長に「号令」と一言だけ言うと、HR終了まで一言も話さなかった。
つくづく放任主義と言うか、なんというか。