藤井先輩と私。
「俺、てっきりフラれるとばかり…なんや…腰抜けた…」
先輩はすとんっと、白いベンチに座る。
「私だって嫌われてるとばかり思ってましたから。この前のことで」
私も先輩の隣に座った。
「そうや、なんで名前呼ぶなって言ったん?」
「さっきそのことを謝ったんですけど…」
「えっ?さっきの『ごめんなさい』ってそれのことか?」
さっきの私たちの会話って、全然噛みあってなかったんだなぁ。
「は、はい。あの時…私、すごく先輩を…その…意識してしまっていて、名前呼ばれるたびにドキドキしちゃって苦しかったんです」
先輩の目を見て話せない。
隣に座ってこんなに近くにいるのに。
恥ずかしくて…顔が見れないよ。
気持ちを伝えたら、この胸のドキドキも前よりおとなしくなってくれるって期待してたのに、倍になってる…。
きっと私今、顔真っ赤だ。
「でも…大丈夫です。先輩に苗字呼ばれるのってなんかさびしかったし…」
「陽依」
先輩が突然私の名前を呼ぶから、体がビクっとなる。
どうしてだろう。
先輩から名前を呼ばれるとこんなにドキドキしちゃうなんて。