CL




ハッとして、顔を上げた。

視界の中に映ったツキコは、泣きそうな顔を浮かべてそこに居た。

絨毯にぺたりと座り込み、泣きそうになるのを、必死でこらえている、そんな表情だった。

その表情のまま、彼女は言う。


「……ねえ、抱いてよ」

「……ツキコ、ふざけんな」

「ふざけてない。ふざけてこんなこと言えるような簡単な好きじゃないッ!」


――ガシャンッ!と。

ツキコの綺麗な瞳から、涙が溢れるのと同時。

俺達の間にあった“境界線”が、崩れるような音が響いた。

……気がした。


「なんでダメならダメってはっきり言ってくれんの!?なんでいっつも誤魔化すんよ!!なんであたしのこと諦めさせてくれんのよッ!!」

「ツキっ…」

「小さい時の約束信じちょるわけやないけどっ、でもキイチくんはっきり言ってくれんやんか!!嘘やって、あたしじゃダメやってっ、ちゃんと言ってくれんのに、あたしどうしたらいいんよッ!!」

「…………」

「ずっと好きやって、ずっとずっと言よったんに、キイチくんちゃんと返事もくれんしっ、それなんにチョコとかたくさん貰ってくるしっ、そんなお人好し最低やんかッ!!」

「…………」

「ホントはね、美味しくなんかないんよっ、あんなチョコレート美味しくなんかないっ、でもキイチくんに食べてほしくないっ、あたしの方がキイチくん好きやもん…っ!」

「…………」

「けどもう嫌や、疲れたわっ、あたしキイチくん好きなん疲れた…っ!」

「…………」

「やけん言ってよ、あたしじゃダメやって、ツキコじゃいけんのやって言ってよっ、あたしもう子供やないよ、嘘つかんでいいけん言ってよ、嫌いなら嫌いってちゃんと言ってよっ……!」





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