【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~
夏のジリジリとした日射しの下をひたすら走る。
人目を気にしながら慎重に…人通りの多い場所では変化を解きつつ。
ただ、
無我夢中で《直感》を研ぎ澄ます。
呼ばれているような感覚に従えば、また違うとも感じて行き詰まる。
こんなことならば若様と一緒に修行させてもらうんだったと馬鹿な後悔まで滲む。
…所詮、誤魔化していただけなんだ。
見つけられないことを
まだ直感の閃きがないからだと…言い訳をして。
もっと早く、若様のように…必死になるべきだったんだ。
――――もう、つまらない意地や傲りは全て棄てる。
今更だけれど
本当に馬鹿としか言い様のない僕だけれど
やっと気づいたこの心の内は
ひとつだけしか、なかった。
…逢いたい。
早く、早く、早く
――――ただ…………君に逢いたくて堪らない。