【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~
意識をはりつめ耳を澄ます。
――――サク…サク…サク……
音は次第に近くなる。
『……!』
…女が、歩いていた。
白地に紅い花柄のような模様の裾の長いワンピースを纏った線の細い…30代ほどに見える、身綺麗な女。
ただ…前を見つめて清ましたような顔で歩いている。
『……っ』
しかも
彼女から漂う異常なまでの……鉄錆びの匂いに、身の毛が弥立つ。
女が僕のすぐ傍を通り抜けた時
『……!?』
花柄だと思っていた模様は…
その匂い同様
べったりと付いた
――――血痕、だった。
僕の血の気が引いたのは…
その女から漂う血の匂いに…ほんの僅か
“甘い花”の香が、……したからだ。