【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~
女が屋敷へと入っていき、石のように固まって動けない僕が残された。
出ていた月は次々と広がる黒い雲の中に姿を消した。
ゴロゴロと低く不気味な雷鳴が轟きだす。
やがて真っ暗な空には稲光が走った。
湿気った雨の匂いと共に、――ザァ…ッ!!と強い雨が降りだした。
むっと熱気に包まれた空気が僅かに冷めていく。
容赦なく降り注ぐ強い雨を黙って受けながら…
足は無意識に、進んだ。
雨に消えそうな
血と…
僕を誘うような…甘い花の香を、……辿って。
そして
――――小さな物置小屋のような古い建物に……たどり着いた。