【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~




女が屋敷へと入っていき、石のように固まって動けない僕が残された。



出ていた月は次々と広がる黒い雲の中に姿を消した。



ゴロゴロと低く不気味な雷鳴が轟きだす。



やがて真っ暗な空には稲光が走った。



湿気った雨の匂いと共に、――ザァ…ッ!!と強い雨が降りだした。



むっと熱気に包まれた空気が僅かに冷めていく。



容赦なく降り注ぐ強い雨を黙って受けながら…



足は無意識に、進んだ。







雨に消えそうな



血と…



僕を誘うような…甘い花の香を、……辿って。












そして



――――小さな物置小屋のような古い建物に……たどり着いた。










< 70 / 121 >

この作品をシェア

pagetop