龍とわたしと裏庭で②【夏休み編】
「楽しそうだね」

「冷たくて気持ちいいわ」

「帽子は?」

「持ってないの」

圭吾さんはやれやれというように頭を振った。

「おいで。ずっといたら日射病になるよ」


わたしは差し出された手をとって水から足を出して立ち上がった。

足元が揺らいで圭吾さんにしがみついたら、そのまま強く抱きしめられた。

反射的に逃げようとしたけれど圭吾さんの腕はびくともしない。

「落ち着いて。嫌な事はしないよ」

そういえば、悟くんからも圭吾さんの好きなようにさせなさいって言われたっけ

もがくのをやめてじっと抱かれていると、圭吾さんがフウッと息を吐いて腕の力を緩めた。

「ほら、だいじょうぶだろ?」

圭吾さんがニッコリと笑う。

よく分からないけど、きっとわたしは何かが上手にできたんだ


ちょっとだけ

ほんのちょっとだけ

圭吾さんが望むようになれるかもしれないと思った。
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