龍とわたしと裏庭で②【夏休み編】
「帽子を買わなきゃね」

圭吾さんがわたしの髪に指を滑らせながら言う。

わたしは圭吾さんの顔をじっと見ていた。


この人が好き

泣きたくなるほど大好き


「圭吾さん」

「ん? 何?」

「キスしてもいい?」

あれ? 何か台詞を間違った気がする

圭吾さんは一瞬驚いたような顔をしたけど、「どうぞ」って笑った。


そうか

これだとわたしからキスしなきゃいけないんだ

どうしよう


圭吾さんが体を屈める。

「首に腕まわして」

言われた通り圭吾さんの首に腕を回して引き寄せ、そっと唇を重ねてみた。

真っ赤になって圭吾さんを見上げると

「短すぎるよ」

そうなの?

「もう一度。少し顔を傾けて――そう」


不思議な感じ

体が熱くなってフワフワする
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