はぐれ雲。
「ねぇ、このお店の名前、ブルーローズっていうのはオーナーがつけたの?」
「そうだと聞いています」
若いバーテンダーが一人、グラスを丁寧に磨いている。
リサは客のいないバーのカウンターで青白い光のもと、ひとりグラスを傾けていた。
AGEHAの閉店後、ここにやってきたのだ。
ここで亮二を待っていた。
最近会ってくれない。
だから「来てくれるまで待つ」とメールをしておいた。
こうすれば必ず彼はここにやってくる、どんなに遅くなっても。
そのために無理を言って閉店後のこの店で飲んで、待っているのだ。
「でもさー青い薔薇って、英語じゃ不可能って意味なんでしょ?」
「ええ」
「どっかの企業が青い薔薇を作るのに成功したって話題になってたけど、あたしは作って欲しくなかったぁ、その薔薇」
「どうしてですか」
「だって不可能って言われてるほうが、夢があるじゃない。いつか自分が可能にしてやるって感じで」
「なるほど。でも今は不可能が可能になった、という意味で『喝采』というのが花言葉だそうですよ」
「ふぅん、喝采ね。確かに何のとりえもないあたしだったけど、今じゃAGEHAのママよ。喝采に値するかもね」
リサは胸を張って笑った。
「みんなあたしがママになるなんて思ってもなかったでしょうね。昔の族のメンバーも。
みんな不可能って思ってた。でもそれを亮二が叶えてくれた。次はね、一つ、自分の力で叶えたいことがあるんだ、あたし」
「なんですか、それ」
「ふふっ。内緒。でもきっとみんな、『ブルーローズ』って言うと思う」
空になったグラスを、リサは光にかざした。
青い光がグラスの中で踊る。
10年以上も前になる。
リサは両親の不仲が原因で、家にいるのが苦痛で仕方なかった。
父は母を殴り、母はそんな父を罵る。
そんなことが毎日昼夜を問わず、繰り返された。
たまらなくなって、リサは両親のいさかいが始まると家を出た。
行くあてもなくフラフラして、なんとなく同じ年代の子とたむろしているうちに、直人と浩介に出会った。
物静かでいつも紳士的な直人と、バカでお調子者の明るい浩介。
彼らについて行った先が、亮二のいる暴走族グループだった。
「そうだと聞いています」
若いバーテンダーが一人、グラスを丁寧に磨いている。
リサは客のいないバーのカウンターで青白い光のもと、ひとりグラスを傾けていた。
AGEHAの閉店後、ここにやってきたのだ。
ここで亮二を待っていた。
最近会ってくれない。
だから「来てくれるまで待つ」とメールをしておいた。
こうすれば必ず彼はここにやってくる、どんなに遅くなっても。
そのために無理を言って閉店後のこの店で飲んで、待っているのだ。
「でもさー青い薔薇って、英語じゃ不可能って意味なんでしょ?」
「ええ」
「どっかの企業が青い薔薇を作るのに成功したって話題になってたけど、あたしは作って欲しくなかったぁ、その薔薇」
「どうしてですか」
「だって不可能って言われてるほうが、夢があるじゃない。いつか自分が可能にしてやるって感じで」
「なるほど。でも今は不可能が可能になった、という意味で『喝采』というのが花言葉だそうですよ」
「ふぅん、喝采ね。確かに何のとりえもないあたしだったけど、今じゃAGEHAのママよ。喝采に値するかもね」
リサは胸を張って笑った。
「みんなあたしがママになるなんて思ってもなかったでしょうね。昔の族のメンバーも。
みんな不可能って思ってた。でもそれを亮二が叶えてくれた。次はね、一つ、自分の力で叶えたいことがあるんだ、あたし」
「なんですか、それ」
「ふふっ。内緒。でもきっとみんな、『ブルーローズ』って言うと思う」
空になったグラスを、リサは光にかざした。
青い光がグラスの中で踊る。
10年以上も前になる。
リサは両親の不仲が原因で、家にいるのが苦痛で仕方なかった。
父は母を殴り、母はそんな父を罵る。
そんなことが毎日昼夜を問わず、繰り返された。
たまらなくなって、リサは両親のいさかいが始まると家を出た。
行くあてもなくフラフラして、なんとなく同じ年代の子とたむろしているうちに、直人と浩介に出会った。
物静かでいつも紳士的な直人と、バカでお調子者の明るい浩介。
彼らについて行った先が、亮二のいる暴走族グループだった。