はぐれ雲。
「リサじゃん」

「レイナ」

目の前には日頃からリサに暴言を浴びせるメンバーの女が数人立っていた。

「何か用?」
むすっとしてリサは立ち上がる。

「何か用、だって!ウケる!」

今は誰とも話したくなかったリサは、その場を立ち去ろうとした。

「待ちなよ」
レイナがリサの腕をわしづかみにする。

「離せよ」

「あんたさぁ、亮二さんに捨てられたんでしょ」

リサはレイナを鋭い目でにらんだ。

「図星」
そういって彼女たちはまた笑う。

高くて耳障りな声で。

「るせぇんだよ」

リサはレイナの髪をつかむと、引っ張り振り回した。

笑い声が一瞬にして悲鳴に変わる。

「何すんのよ!」
すぐに形勢は逆転する。

羽交い絞めにされたリサは格好の的だった。
レイナを筆頭に順番に殴ってくる。

立っていられなくなると、次は蹴られた。

「調子のんなよ。亮二さんがいなくなったら、あんたなんて毎日でもこんな目に遭わせてやる!
マジでムカつくんだよ!」

そう言って、横たわるリサの背中を思いっきり蹴った。

「おい!何やってんだ!」

通行人が通報したのだろう、警察官が走ってこちらに向かってくると、レイナたちは雲の子を散らすように逃げていった。

うずくまったままの彼女をそのままにして。


警察署で事情を聞かれたリサを、遠方から祖母が迎えに来た。
期待はしてなかったが、やはり両親は迎えには来なかった。

「リサちゃん、おばあちゃんと一緒に暮らそう」
祖母は泣きながら言う。

<何を今さら>

そんな祖母を置いて、リサは早足で警察署をあとにした。

服はドロドロ、髪は乱れ、顔にもアザができ、少し腫れている。

本当に一人だった。

祖母が差し伸べてくれた手も、自分から断ってしまった。

リサは正直、途方にくれていた。

<マジでこれからどうしよう。もう族にも戻れそうにない…>

よたよたと歩いていると、
「リサ」と、静かな声が聞こえた。

ギョッとして顔をあげると、目の前に亮二が立っていた。

とっさに髪で顔を隠す。

彼には傷だらけの顔を見られたくなかった。

彼女は小走りで亮二の横を通り過ぎる。


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