はぐれ雲。
みじめな姿を笑いにきたのかと思った。

「リサ」
彼の声が背後からもう一度聞こえる。

<やめてよ、もう…>

「一緒に、来るか?」

その言葉に驚いて、思わず振り向く。

「今なんて…?」

ゆっくり亮二が向き直った。

「一緒に来るか?」

もう一度彼は同じ言葉を口にする。

「ついてきても、今よりもっと辛い思いもする。戻りたくても戻れねぇぞ」

「…亮二」

リサは何度も頷いた。

「…うん。うん…」



それからリサは寝る間も惜しんで働いた。

朝は新聞配達、昼はファーストフードの店員、夜は年齢をごまかしてスナックで。
飲めないお酒を飲み、何回も胃を壊した。
それでも仕事を休むことはしない。

亮二たちの生活を支えるために。
なによりも、彼に認めてもらいたくて。

唯一の楽しみは時々亮二、浩介、直人の四人で、狭いアパートで一緒に鍋を囲むことだった。
家族ができたみたいで、本当に幸せだった。

18歳になるとすぐに高級クラブのホステスになった。

そこで客へのマナーを徹底的に教え込まれ、毎日何紙もの新聞を隅から隅まで目を通し、客との会話に役立てる。
一流になるためには、努力を惜しまない。

そのおかげで、リサは3年後には押しも押されぬナンバーワンの座に君臨していた。

その頃には、圭条会で順調に地位を築いていた亮二も店に来てはリサを指名してくれた。

そして彼女はホステスとしての地位を完全なものにしていった。




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