はぐれ雲。


食事をすませ店を出ると、暗い空から雨が落ち始めた。

「あ、雨…」

ポツリ、ポツリと空からしずくが落ちてきたかと思うと、あっという間に大粒の雨になった。

「ついてねぇな」

亮二と博子は急いで雨をしのげる場所を探す。

あいにく今夜は街のはずれのレストランに来ていたため、カフェもコンビニすらも見当たらない。

タクシーを拾おうにも、運悪く見当たらない。

亮二はスーツの上着を脱ぐと、博子に投げた。

「濡れるぞ、かぶれよ」

「でも、新明くんは?」

「いいから」

博子は頭からその上着をかぶると、亮二の後を追って走った。

白いシャツが雨に濡れて、彼の体にまとわりついている。


やっとのことで線路の高架下に逃げ込んだ。

亮二の額から、しずくが流れ落ちていた。

「大丈夫か」息を切らしながら彼は訊く。

「…うん」

亮二の締まった体つきが、濡れたシャツを通してはっきりわかる。

博子は目のやり場に困り、亮二の上着を無意識のうちに胸元に引き寄せた。
微かに漂う煙草の匂い。

高架下のトンネル内は独特のオレンジの光に包まれていた。

人も通らない。

時折頭上を電車が通り過ぎる度に、耳をふさぎたくなるような大きな音がした。


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