はぐれ雲。
レンの取調べが行われていた。

達也は別室から桜井と共にその様子をうかがう。

彼は憔悴しきっていた。

魂が抜けきってしまったかのように、うつむき、微動だにしなかった。

「ショック状態やなあ。今日は話聞くん、無理ちゃうか?」

桜井が腕組みをした瞬間、レンがポツリポツリと話し出した。

「亮二を刺したら…路地を抜けて、おっさんが用意した車のところまで行くように言われてたんだよ。車内には当面の生活費と偽の身分証明書が用意してるからって。高速に乗って、とりあえず遠くに逃げろって。
リサが刑期を終えて出てきたら、おっさんが俺のところへ彼女を連れてきてくれるって言ったんだ。でも、いざ亮二を殺って、言われた場所まで逃げたけど、車なんてどこにもなかった!はめられたんだよ!
そうだろ?俺だって被害者だろ?」

大きく見開いた目で、連は捜査員にしがみついた。

「信じてくれよ!本当なんだって!
あのおっさんの言う通りにしただけなんだよ、俺は!」

半狂乱状態だった。

「…今日はやっぱり無理やな」
桜井は眉をひそめた。

「ええ」
達也もそう答えたものの、半分上の空だった。

気になって仕方なかった。

博子はちゃんと実家に行っただろうか。
もう事件のことを知っているはずだ。

できることなら、彼女のそばを離れたくなかった。

ふいにポケットの入れてあった携帯が鳴った。

義母の幸恵からだ。

嫌な予感がする。

「すみません、ちょっと」
桜井に断ると、達也は小声で電話に出た。

「もしもし……え?」
一瞬で体が凍りつく。

しかし、次の瞬間には部屋を飛び出していた。

「おい!加瀬!どこに行くんや!」

桜井の声が聞こえたが、止まることなんてできない。

外に飛び出すと、タクシーに飛び乗った。


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