はぐれ雲。
あれ以来、時々空を見上げては、物思いに耽る博子がいた。
夜、気付かれまいと声を殺して泣いている博子がいた。
亮二を想っているのは確かだった。
そんな彼女の背中を何度も何度も達也は見てきた。
何も言わず、一年間見守ってきた。
自分の前では明るく振舞う姿がかえって痛々しい。
そして何もしてやれない、それが腹立たしかった。
彼女を救えるのは、新明亮二しかいないとわかっていただけに余計。
<やっぱり俺は新明には、かなわない…>
土手をゆっくりと歩きながら、彼はあることを考えていた。
きっとそれは彼女のためにもなる。
たとえ、そのことで自分から離れることがあったとしても、もうそれは仕方のないことなのだ。
愛している。
だからこそ、博子を鳥籠から出してやろう。
扉を開け放とう。
飛んでいくも、留まるも、それは彼女次第だ。
夕日が沈むのを彼は一人土手に座って眺めていた。