はぐれ雲。
彼の真意がわからなかった。
「どうして急にそんなこと言うの?」
博子は思い切って訊ねた。
「来月から、新しい生活が始まるんだ。
だから今のうちに新明のところへ行って、君の気持ちに区切りをつけてくれないか」
「区切り?」
「話したいことが…謝りたいことがあるんだろ?ずっと、わかってたよ。行っておいで、そして気の済むまで手を合わせてくるといい」。
博子はたまらず目を伏せた。
また彼に甘えている…と。
「そんなこと…」
「俺が行けって言ってるんだから、いいんだよ」
達也の微笑んだその瞳に何の曇りもなかった。
その優しさに涙腺が緩む。
「泣くなよ」
「だって、どうしてあなたはこんなに優しいのかなって…」
「……」
「どうしてなの…」
博子の質問には答えず、
「あのさ、土産は信州そばがいいんだけどな」
そう言うと、達也はご飯をかき込んだ。
「もう…はぐらかして」