喫茶投稿
コーヒーとエプロン
「う~ん、このへんが限界かな…」
香月が制服の上からエプロンをつけて、腕組みをして考え込んでいる。
学園祭で喫茶店をやることになったらしいんだが、他のクラスのように衣装が用意できなくて困っているようだ。
「ちょっと地味だな」
横から声をかけると、鼻の頭を掻きながらこっちを向く。
「モカが材料にこだわりすぎて、予算なくなっちゃったんだよ」
モカ…ああ、アメリカから来たっていう留学生か。
「インスタントじゃダメとか、言いそうだよな」
コンビニで買ったアイスにバニラが入ってないのはサギだって騒いだらしいからな。
「挽いた豆は高くつくからな」
高校の企画で、そこまでのクオリティを要求する客はおらんぞ。
「それならまだいいんだけど…」
香月が肩をすくめた時、玄関のチャイムが鳴った。
「カヅキ~、ミル買ってきたヨ~」
問題のご当人登場だ。
「淹れる時に挽かないと薫りが落ちるからって…」
溜め息をつきながら、香月は出迎えに向かう。
どれ、奴さんの顔を見てやろう。そう思って後を追うと、ちょうどモカと目が合った。ん?
『あ~!』
互いに相手を指差し、思わず声をあげる。
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