それでも君が。
私がそれに怯み、眉を寄せると、秋山先輩は噛み締めていた唇を開いた。
「私、あなたのこと大嫌い。絶対、絶対許さないから」
「秋山!」
蒼君の大きな声が響いたのと、周りの生徒達が私達の方を見向いたのは、ほぼ同時だった。
蒼君が大きな声を出すなんて……
信じられない気持ちでいると──
秋山先輩は少しだけ目に涙を浮かべ、私をまた一睨みし、足早に昇降口に向かっていった。
目だけを横に向けると、蒼君が険しい表情をしているのが目に入った。
「そ、蒼く……」
「じゃあな。また放課後」
結局一度も私の顔を見ないまま、蒼君は3年の靴箱に向かって歩を進めた。
蒼君が1人になった瞬間、何人かの男の先輩が「おー蒼汰!」と言いながら近寄っていく。
それに対応する蒼君の表情は見えないけれど、私と一緒にいる時の空気よりかは、柔らかい気がした。