それでも君が。
振り払われた手を呆然と見つめる私に、蒼君は言った。
「触るなって何度言ったら分かんの」
頭の中で、大きな音がガンガン鳴っている気がする。
そんな中、さっきの女の先輩達が、クスクスと笑う声が嫌でも耳に入ってきた。
「調子乗んなって。いくら優しい蒼汰君だって迷惑だって」
「ほんとほんと。自分の顔、鏡で見たことあんのかな」
「蒼汰君だって、昼にまであんな顔見てたくないよねぇ」
周りの先輩達が、黙って私達の動向を見ているのが分かる。
教室中が静かだ。
キャハハッという、蒼君を取り囲んでいた先輩達の声だけが響く。
私は、持っていたお弁当箱をギュッと握り、窓際の先輩達に向かって言った。
「……私がブスだからって、先輩達に迷惑かけましたか!?」
一気に笑い声がやみ、また鋭い眼光が私を刺す。
「そ、蒼君は、私がブスでも、可愛いって言ってくれます。……蒼君が、私を選んでくれたんです。それを、他の誰かに、笑われる筋合いはありません!」