それでも君が。
怒りに震える彼女を放り、藤堂君は入り口に向かって歩を進めてくる。
つい身構える私の姿を認めた藤堂君は、口角を片方だけ上げた。
「よう。エセお姫様」
──こんなこと思っちゃダメだけど。
……殺してやりたい。
ギッと睨むと、エロ魔神は私の目の前で腰を屈め、顔を覗き込んでくる。
「夏休みはヤりまくりましたか〜? お姫様」
「なっ……! 最低! あんたね、」
「もう説教はいいって。なぁ、センセーに言っといて。始業式の間、保健室行きますってよ」
「ちょっ! それ、仮病じゃ……ちょっと藤堂君!!」
私の言葉を無視し、彼はあくびをしながら、廊下を歩いていった。
黒色の髪の毛をクシャッてするその手は、悔しいけど色っぽいと思った。