虹の彼方




「悪いな、相合傘の相手が初対面の俺なんかで。」



苦笑を漏らしながらあたしに向かって言っていた和くん。


あの時から和くんは親切で、優しかった。



「いえ……」


「てか、あんたさ、さっき家近いとか言ってたけど…だいぶ歩いたよ??」



「あ。すみません。嘘つきました。めちゃくちゃ遠いです。迷惑になるので消えます、すみません。」

と言って傘から出ていこうとすると、和くんは「いや!!大丈夫だから!!」
と言って再び傘の中に連れ込まれた。


雨の音と、静かな空気が交ざり会って、町一体が不思議な感覚に覆われている。


「まぁ、今日は天気予報にも雨が降るなんて言ってなかったしな。俺もたまたま置き傘があっただけだし。」




なんか…


この人よく笑う……


さっきから会話が無くても、ずっと笑顔だし…


「えっ??なんか俺の顔に付いてる??」



じっと見ていたものだから、あたしはびっくりして目を反らした。



「あ、いや……よく笑うなぁって思って。」


へ、変に思われちゃったかな…???


そっ…と横を見てみる。



和くんの顔は……


……やっぱり笑っていた。


歯を見せて笑って目を細めて笑う和くん。


なにか…温もりを感じた。

なにかが、取り戻せた気がした。



普段、何気なく過ごしてる毎日の中で、人の笑顔がこんなにも勇気付けられる。



すごい



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