オトナな初恋
『みんなちょっといい?』

木下常務が小部屋にいる私達に声をかける。
一旦手を止めて木下常務の話を聞く。




『今日でこの部屋から出て役員室へ戻る事になったんだ。引き継ぎも済んだしね。元々僕がやるはずだった仕事を極秘で行って貰うためにこの部屋を宛てがった訳で、僕が引き継ぎを終えた以上、君達にも大部屋へ戻ってもらうべきなんだが…このままここで自分達の仕事をやって貰う事にしたよ。移動するのも結構大変だしね。』




『お言葉に甘えてもいいんですか?』


そう尋ねる拓海さんに木下常務は笑って答えた。





『ああ。せめてものお詫び、かな?関口君は、元の電算部に戻りたいかい?それなら手を回すよ。』




『いえ、面倒だからこのままでいいです。2人の邪魔にならなければ、ですけどね。』




「邪魔になんてしません!…私もいていいんですか?元は営業推進部にいたんですけど…」


拓海さんの仕事が通常に戻れば、私の助けなんて必要なくなっちゃうよね?なのにこのままここにいても良いものなのか気になっていたの。




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