オトナな初恋
うそ…
逢えちゃった…


は、話かけなきゃ!!


「ど、どうぞ…」


そういいながらコピー機の前から避けた。


って!!違−う!!もっと、別の!!


こんな近くで、しかも二人きりなのに、何を話せばいいのか、全っ然何も浮かばない。


恋愛経験0の自分に情けなくなってくる。


『残業?』


「は、はい!明日までに資料作成頼まれて、今やっと終わったところです!」


まさか早坂主任から声かけられるなんて!!


『そう、お疲れさん。』


コピー機から目を離さずだけど、私と話してくれてる!


「早坂主任こそお疲れ様です。あれ?でも総務部ってコピー機置いてあるのに、どうしてここで?」


『うちのコピー機調子悪くて、すぐ用紙詰まりするからこっちの方が早いと思ってね。…それよりその資料って…』


「明日の社内会議で使うみたいで、今日の午後に頼まれたんです。」


『…社内会議で…そう、大変だったろ?そんな量を午後からやらされるなんて。』


「はい…でも大丈夫です!もう終わりましたから。」

最初は恨んだものの、今は上司に御礼を言いたいくらいだよ!


お陰でこうして早坂主任と話せるんだもの!!


一緒にいられる事が嬉しくて、自然とにやける。


でもそんな時間もすぐに終わってしまう。


早坂主任のコピーが終わってしまった。


『後片付けは俺がやっておくから、気にせず帰っていいよ。』


「はい…じゃあ、お先に失礼します。」


これ以上ここにいる理由も、話す事も無くなってしまった。


名残惜しさを感じながら、私はコピー室を後にした。

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