オトナな初恋
『一緒に行くよ。』




「昨日の様になってしまったら、会社にも迷惑かかるので…私ひとりのほうがいいと…」





そう言う私に拓海さんは少し固まった。
思い出したんだろうな。あの雄叫びのような泣き声。








『昨日の様って何?』




尋ねる関口主任を見て、私はお財布を取りだして立ち上がった。



「な、何でもないです。とにかく、ちょっと出てきます!!」






あれをどう説明すればいいのか…見た人じゃなきゃ、わからないよね。










ロビーに出て辺りを見回す。




『亜希っ!!』




手を振って近づいてくるお兄ちゃん。





「ちょっと!!何しにきたの?お兄ちゃん、仕事はどうしたのよ!?」





『仕事先、亜希の会社と近いから、お昼一緒に食べたいと思って来たんだ。さあ行くぞ。』





私の手を引っ張り大股で、ずんずん進んでいくお兄ちゃん。






連れて行かれたのは、近くの定食屋さんだった。







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