オトナな初恋
そんな私を早坂主任は横から手を出して支えてくれた。

『帰るにしても、もう少し休んでからにしろ。


「でも…」

そう言って、顔を上げる。

すぐ側には、早坂主任の顔。
慌てて俯く。

あ、やばい。いきなり下向いちゃったから…気持ち悪い…

『桜井?
お前ッ顔真っ青だぞ?気持ち悪いんだな?』

答える余裕がない。手で口を押さえる。

『−−ッ!!こっちに来い!!』

連れて行かれたトイレ。

ドアを閉めると同時に、我慢できずに、吐いてしまった。



うぅ。絶対、早坂主任にも聞こえてるよね?
最悪だよ…




その後、2回吐いて、やっとトイレを出た。


部屋の中から早坂主任が顔をだす。


『楽になったか?』


「…はい…すみ…ませんでした。」


恥ずかしくて、情けなくて、涙が出てきた。
好きな人の前でなんて失態。
こんな所見られるなんて。
俯いて服の裾をギュッと握る。



『どうした?また気持ち悪くなってきたか?』


優しく聞いてくれる早坂主任の声。



私は俯いたまま顔を横に振った。



『無理するな。気にせずゆっくり休んでいけばいい。』


そう言ってくれる早坂主任。


何でだろう。こんなに切なく感じるのは。
優しくしてもらってるのに、どうしてこんなに
泣きたくなってしまうんだろう。

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