オトナな初恋
『桜井?』

何も答えない私に近づいてくる、早坂主任。

やだ。近くに来られたら、泣いてるのばれちゃう。
酔っ払って、寝て。
起きたと思ったら、吐いて、その上泣いてるなんて、サイアクじゃん。そんなの。


ばれたくなくて早坂主任に背中を向けた。


『さ、 くらい?』


変に思うよね。でも、泣いてるの知られたくないの。

「あの、吐いた後なので…変な匂いしてると思うから。

だから…ッく。…これ以上、近くに来られたら…私。私…」


泣かないようにと思っているのに、どんどん涙が溢れてくる。


こんな風に泣いたりしたら早坂主任、心配するじゃない。
ううん。うんざりするかも。

だから泣き止まなくちゃ。

早く。泣き止まなくちゃ。



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