藍色の砂



泣き崩れる咲妃さんを
少し離れた待合室へ連れて行く。
母親は医師から症状を聞いている。



『一命は取り留めたって。』



そう言って隣に腰を下ろした。
当たり前だ。
あっけなく逝ってもらっちゃ困る。



膝の上にある細い手が微かに
震えてる。
そこにポタポタと
こぼれ落ちていく涙。



『…電話、くれてありがとう。』



しゃくりあげる声で言う。



小さく震える肩。
しきりなしに声を押し殺して
泣き続けている。



意識が戻るまでは
いつどうなるかはわからない。
意識が戻っても
脳に何らかの影響が出るかも
しれない。
そう医師は母親に伝えていた。



薄暗い待合室。
廊下の明かりだけが灯っている。




『コウくん…。』



弱々しい声がボクを呼ぶ。
黙ったまま顔を向けた。










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