男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
しかし、泊まりに行かないかと聞かれて考え込む。
楓とも少し気まずいまま別れてしまったし、どうすればいいのだろう。
とりあえず学校か、ダンスレッスンで会ったときに話し合ってから考えればいいと思い
考えとくとメールを返した。
学校まで母親に送ってもらうと、久しぶりの校舎を見て懐かしむ。
意識不明になる前も、仕事の関係であまり学校に通う事が出来ていなかった陽はしっかりした足取りで中へと入る。
授業が始まっている為に廊下には誰もいなかった。
階段を上がったところで 陽くん、 と誰かに声をかけられた。
「?」
振り向けば、そこには顔を真っ赤にした女子生徒が立っている。
見たことがない為に首をかしげれば、彼女はバッと頭を下げてきた。
「昨日はヒドイ事をしてごめんなさいっ!」
「え?」
昨日、何があったのかわからない為に陽は焦った。
目の前の少女はおそらく普通科の生徒だろう。
芸能コースでは見たことない。
「いや、いいよ。」
とりあえず適当に話を合わせる為にそういえば、少女は有難うございます!と言ってばっと顔をあげた。
「じゃあ、俺行くから。」
「あ、その前に...。」
「何?」
「これ、南君に渡してもらえませんか?」
目の前に差し出された手紙を陽は笑顔で受け取った。
きっと、南のファンなのだろう。
「うん、分かった。」
じゃあ、と少女と別れると陽は教室に入る。
丁度昼休みになったところだったらしく、郁は自分の姿を見つけると歩み寄ってきた。
「陽...大丈夫か?」
「え?大丈夫だけど。」
「昨日、様子が可笑しかったから心配だった。」
「全然大丈夫!心配してくれてありがとな。」
郁に礼を言って微笑めば、彼は何か違和感を感じたのか首を傾げた。