男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「陽?」
「何?」
「いや、なんか...何でもない。」
「何だよ、はっきり言えよー。」
気になるだろ、と言えば郁は眉を寄せて自分を見てきた。
「陽が、陽じゃない気がして...。」
「え?」
「いや、何でもない。南達のところに行こう。」
今日は屋上で昼食をとるらしい、と言い鞄を持って教室を出ていく。
陽は彼に続いた。
屋上の扉を開ければ、南と視線が合う。
「陽ー!!お前昨日はどうしたんだよー!」
心配しただろー!としがみついてくる南に思わず苦笑して腰を降ろす。
「大丈夫だって。」
「ならいいけどさっ!」
南が、純粋な笑顔を自分に向けてくる。
前までは突っかかるような、嫉妬も含まれているような言葉で自分に絡んで来たのに
今の彼にはそれがない。
それに、郁の表情も前より柔らかくなったような気がした。
自分の知らないところで、スカイは変わっている。
「あ、南。これ。」
「何だそれ。」
「南に渡してくれって頼まれた、ファンレターなんじゃないの?」
「ふーん、家帰ってから見るよ。」
そのまま手紙を鞄にしまうと、南は購買で買ったパンを取り出して食べ始めた。
陽はちらりと楓に視線をうつす。
彼は平常を保っているつもりだが、陽には何か悩みを抱えているように思えた。
きっと、ことりの事だろう。
「楓。」
「何?陽君。」
気づけば楓を呼んでいた。それに反応して、楓は視線を向ける。
「後で、話があるんだ。」
「...うん。」