男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「あなたたち、授業をサボって屋上で変な事しようとしてたなんて…ファンの子が見たら発狂するわよ。」
信じられない、というような視線を向けられ、郁は溜息をついた。
「お前こそ、サボりだろう。」
軽くスルーして千鶴にいえば、彼女は 違う と言う。
「仕事がさっき終わったばかりで、今学校に来たのよ。途中から授業を受けるのも嫌だし、屋上で時間潰そうと思ったら…あんた達が、…」
「…。」
反論できない。
見られてしまった以上、認めるしかないような気がした。
「本当に、呆れるわ。彩乃も森山陽の事が気になるみたいだし。」
彩乃、という名前は聞いた事がある。
たしか、楓の妹のはずだ。
「あ、アタシと彩乃は同じ事務所に所属してんのよ。」
ぺらぺらと話す千鶴は苦手だと感じた。
アイドルが嫌いと言っておきながら、どうして自分達の傍にいるのかわからない。
「…ん、」
千鶴の声に反応して、眠っていたことりは目を覚ました。
怠そうに体を起こすと、目を擦る。
その様子をみて、千鶴はぼっと顔を赤くさせた。
「…ごめん、寝ちゃってた。」
「いや、いい。」
「……あ!」
郁から千鶴に視線を向けて、ことりは驚いたように声をあげた。
衣装に着替える為に女子トイレに入った時に見かけた、女の子が目の前にいる。
「…変態。」
千鶴がぼそりと呟いた。
ことりは あの時はごめん と謝るが、彼女はそっぽを向いてそれ以上話そうとしない。
「陽、行こう。」
「え、うん。」
もうすぐ授業が終わる時間帯だ。
千鶴と関わるのが面倒臭くなった郁は陽に声をかけた。
それをおもしろくなさそうな顔をして見ている彼女を無視して、二人は屋上を後にする。
「…。」
一体、なんなのだろう。
千鶴の心にもやもやが広がっている。
本音を言えば、女子トイレで陽と出会った時から彼の事が気になっていたのだ。
変態なアイドルは嫌いなはずなのに、気になってしまっている自分に嫌気がさした。