御曹司の溺愛エスコート
「都内のホテルに部屋を取りました。今日はそこでお休み下さい」

「それは嫌です……この近くのホテルに泊まります」

桜が拒否するように、首を大きく振る。


「蒼真様のご指示なので」

「真琴さん……」


蒼真の名前を出されて言う事を聞きそうになった。


ダメ、もう吹っ切るんだから。


「さあ、車はこちらです。付いて来てください」


真琴が歩き始めた。


桜は付いて来るものと思っていた。


「真琴さん……スーツケース、いらない……」


そう言うと、桜は人の合間を縫って姿を消した。


真琴は舌打ちをしたくなった。消えた桜の姿から手元のスーツケースに目をやる。


まさかスーツケースをいらないなどと言うとは思わなかった。
それほど蒼真様に会いたくないのだろうか……。



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