もうひとりの…
「結城さん、とおっしゃいましたよね」

「? あ、はい」

「あなたは、うちの娘が好きじゃなかったのでは?」

松田さんはそんなことを言いながらも、微笑んでいた。

「…なぜですか?」

意外なことを聞かれた私は、思わず聞き返していた。

「…あの子の昔の日記を読んでいたら、あなたのことがよく書かれていたから。"どうしても仲良くなれない子がいる"って…」

真奈美が私のことを…?

にわかに信じられず、私は視線を落し、出された湯呑みを握った。

「真奈美を避けていたのが本当なら、あなたはなぜここへ来たのかしら?」

松田さんは不意にそう尋ねてきた。

「もし、あなたが真奈美に興味が無いならここには来ないはずじゃない?」

私は顔をあげ、松田さんの顔を見てみると、目の前の彼女は温かい目で私をそっと見つめていたのだ。

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