ハルアトスの姫君―君の始まり―
「ミア…あなたはここに残っていた方が…。」

「にゃあ。」


ジアの足にミアの爪が少しだけ当てられた。
…『残らない』っていう意思表示とジアは解釈し、ミアに微笑みかけた。
それに応じてミアも爪を引っ込める。


「分かった。一緒に行こう。」

「みゃあ。」

「おれのことも忘れんなよな。」

「分かってるって!
4時くらいには村を出よう。あと6時間後に出発。」

「分かった。おれは一度家に戻って持ち出せる分の薬は持ってくる。
あと何か必要なものは…。」

「…食料とかはあたしが準備するわ。クロハは薬だけ、お願い。」

「おう。任せとけ。」


それだけ言い残してクロハは自分の家へと戻った。
ジアも準備に取り掛かる。


「…最悪の場合、現地調達よね。お金もあんまりないし…。
あとは働きながら稼いで宿を見つけていくしか…ない…よね?ミア。」

「にゃあー。」

「…あとは戦争に巻き込まれないように気をつけなくちゃ。」

「みゃあ…。」


戦いに巻き込まれるような都会を常に歩くつもりはないけれど、都会でなければ仕入れることの出来ない情報もあるだろう。
だからもし巻き込まれた時には…


「守るわ、絶対に。」


この剣で、大切な人を…必ず。
震える手に気付かないふりをして、ジアは柄に触れた。

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