ハルアトスの姫君―君の始まり―
ただ、そばにいて
* * *


久しぶりに全員がそろって食事の席につき、ほとんど無言で食事を終えた。
使い終わった食器を水場に運び、ジアは洗い始めた。
クロハは読書に勤しんでいるし、シュリも食事が終わってすぐに自室に戻ってしまった。


ジアは手を動かしながらはぁ、と大きなため息をついた。


「手伝うよ。」

「キース!だっ…大丈夫だよ。」

「量も多いし。ため息の理由も気になるから。もし良ければ話して?」

「……。」


話してと言われても、話していいものなのかどうかジアには分からなかった。
シャリアスがシュリの恋人かもしれないこと…
それはとてもデリケートかつプライベートな話に思える。


「…好きな人…。」

「え?」

「好きな人が敵になっちゃったら…悲しい、よね。」


絞り出せたのはそれだけだった。
結局のところジアにはそこが何よりも心配だったのだ。
シュリの知るシャリアスがジアの見たシャリアスとイコールかどうかは分からない。
しかしイコールである可能性の方が明らかに高い。
だとすればシュリにとって、村を壊そうとするシャリアスは敵になる。
好きになった人が敵になってしまうなんて…。


「皿洗いなんかしながら聞くような話じゃないみたいだね。
終わったら少し、外出ようか?」

「…うん。」


キースのその申し出は素直に嬉しかった。
頭が混乱しているのは確かだったし、その混乱をキースの言葉が解消してくれるような気がしていた。

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