ハルアトスの姫君―君の始まり―
どう答えるのが〝正解〟なのだろうか。
彼女の機嫌を損ねずに、上手くこの場を乗り切る答えが今の俺には見つからない。


「会うことなどできません。もう二度と。」


結局正直に答えることにした。
ルナにはもう会えない。
―――この世では決して。


「それができる、と言ったら？」

「不可能です。」

「キース・シャンドルド。
ジョアンナ様に意見する気ならそれ相応の覚悟をもって…。」

「シャリアスよ、下がりなさい。
キースは決して私に歯向かっているわけではないのだよ。
…ただ、知らぬだけだ。死者と会う術を。」


頭の中で一度だけ繰り返される〝死者と会う術〟という言葉。
そんなもの、存在しない。
死者は蘇らない。それは自然界の、ひいては全世界中の理だ。
それを崩すことは…


「世界の死を意味します。」

「…世界の理を崩すということがか？」

「はい。」

「世界など、守るに足るか？」

「え…？」


さっきから質問でしか返されていないような気がする。
この女が読めない。
―――元々勝てるような相手でもないけれど。


「秩序を守り、世界の一部となって働き、結果我々は何を得た？
…失っただけではないか？」


彼女の言葉は真実だ。
『いいえ』とは言えない。

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