ハルアトスの姫君―君の始まり―
【クロハside】


『向こうからは見破られてしまうんじゃないかい?』

「おれらどっちも、シュリみてぇに魔法は使えねぇんだ。
不可視状態にすることなんて無理だろ!強行突破しかねぇ。」

『まーったく、浅知恵だねぇ。
でもま、その心意気だけは褒めてあげるよ。』

「ありがたく受け取っておく。」


そこで短く言葉を切った。
城のてっぺんからおよそ100メートル上空に浮遊して5分。
さて、どこから入ったもんか…。


『あたしはそんなに長くここに居られないよ。』

「わーってるよ。魔力の供給がねぇもんな。」

『まぁ、ゼロではないんだけどねぇ…。』

「え?」

『その猫の身から溢れる魔力を少々頂いているよ。』

「ミアの?」

『シュリのとは違うけど…お前も魔法使いかなんかかい?』

「にゃー。」


ミアは首を横に振った。ミアは魔法使いではない…はずだ。


『そうかい。じゃあ呪いのせいで後天的な魔力を得たか…な?』

「まどろっこしい話は後だ!
あ、おい!あっちの窓、開いてるぞ。あっちに寄ってくれ!」

『あいよ。』


箒はゆっくりと窓辺に寄る。
腕を伸ばしてミアをまず中に入れ、次に自分の身体を運ぶことに専念する。
無事に部屋の中に足を下ろす。


…ここは、城の中のどこなのか…。
そんなことを思っていた矢先、視界に飛び込んできたのは…。

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